Mantam マンタム 「塔の上の音楽」

Mantam

150,000円(税込)

Mantam マンタム 「塔の上の音楽」



塔の上の音楽

その村は砂漠の外れに長く存在した孤立した世界だった。
言語も文化風習も独自なもので他の文化圏と共有出来るものがあまりにも少なくごく稀に遠方から人が流れ着くように訪れることがあってもそこから何かが零れ広がるようなことはなかった。
だがあるときから馬に乗った盗賊の集団が収穫の時期になると村を襲撃するようになりこれといった防衛手段を持っていなかった村は深刻な被害を被るようになっていた。
長老達は集まって協議したがこれといった解決策は無くせいぜい砦のように村のまわりに石を積み上げるくらいのことしか出来なかった。
実際は盗賊と言っても30人にも満たない数だったが村人達は初めて見る馬と言う存在が脅威であり防衛と言っても戦うことさえできずただ逃げ惑うだけだったからだ。
彼らからすれば馬は神や悪魔のような存在に思えむしろ馬に乗った盗賊が馬に操られているように思えていたのだ。

被害は年を追うごとに深刻さを増し追いつめられた村人はようやく闘うことを決めたのだがそれは盗賊に対してではなく馬に対してだった。

そして
火や罠を使ってようやく一頭の馬を殺すと村人は石を積み上げて可能な限り高い塔を建てるとそこに馬の死骸を吊るした。
これで他の馬が怯えて村に来なくなると考えたからだ。
吊るされた馬は強い日に晒されて乾涸び時折風が吹くとカタカタと動き乾涸びた体のすき間を抜ける風が泣き声のような音をたてた。

奇妙な一致だったのだろうが馬を吊るしてからは盗賊が村に来ることはなかった。
その本当の理由は誰にもわからない。
襲撃を続け疲弊した村から盗るものがなくなったと盗賊が考えて手を引いたのか 
どこか他の村を襲撃して手痛い反撃にあい全滅したのか 
それはわからなかったがそれからは長く平穏な日々を送ることが出来た。
塔に吊るされた馬の死骸は乾涸び崩れて行き最後は頭の骨だけになっていたがそのまま塔の上に安置され風が吹くとひゅうと泣くのだった。

もう村人達がなんのためにそこに馬の頭骨が吊るされているのかさえ忘れた頃その頭骨は村の守り神となっていたのだ。

それから更に長い年月が経ち村が小さな国のような存在になった頃 頭骨はようやく塔から降ろされて隣国との交易で手に入れた珍しい車輪付きの手押し車を失われた体の代わりに取り付けられた。
頭骨は遠方から来た大切な客をもてなす為の儀礼として使われるようになったのだ。



サイズ:高さ約65cm・縦幅約55cm・横幅約25cm

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マンタム

マンタム 田村 秋彦

日本一クレイジーな骨董屋「アウトローブラザーズ」の首領のマンタム。
実験器具や医療器具、動物の剥製や死骸。様々な骨董を自在に操り、オブジェやアクセサリーなど芸術作品を創作する。
映画や、舞台美術、アートなど幅広い分野で活躍するチェコの巨匠、ヤン・シュバンクマイエルと親交が深く、彼の展示が日本であったときには「ヤン・シュヴァンクマイエル氏への逆襲」展を開くほどの仲でもある。
まだこの世に存在していない「カタチ」を求め、Mantamの創作活動は続く。

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